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宍倉先生

再建への原動力となった実績。宍倉病院は民事再生へ

——患者さんと職員の方々との板挟みを、どのように打開したのですか。

がむしゃらに頑張れば頑張るほど職員は疲弊していく、しかし、楽に収入が増える妙案は見当たらない。巨額の負債を抱え、現実的な返済計画を立てる事は事実上不可能になってきました。
そこで、悩みに悩んで、本当に迷いましたが、民事再生を選択する事にしたのです。
これは、今までお世話になった方々に多大なご迷惑をおかけすることになるという、とても難しい問題を孕んでいました。加えて、民事再生法ではある債権者にはお金を払い、ある債権者には払わないといったことはできません。「当院の債権者すべてに借金の減免を了解していただく」。これが民事再生法による再建への第一歩なのです。
私自身、債権者の方々にこの提案が受け入れられるのか、不安がなかったと言ったら嘘になります。しかし、最終的には「地域の方々の判断に委ねよう」という気持ちになれました。
地域と病院は密接につながっているし、常に見られている。つまり、“日々ひとり一人の患者さんに真摯に向き合う”ことが、病院の評価につながります。この積み重ねが地域にとって必要な存在になるには欠かせないのです。私が来てからの数年間で、宍倉病院は患者さんたちに真剣に向き合ってきましたし、こうした姿勢が地域の人々からも評価されている自信があったということですね。
結果として、多くの債権者の方々に、ただ単に病院や土地を売り払って資金にするよりも、自分は一時的に損をするかもしれないが、宍倉病院を再建することが地域には必要だと考えていただけました。
こうして宍倉病院は、再起への道を模索するチャンスをいただくことができました。

——民事再生後に変化を感じていることはありますか。

宍倉病院に来てからの10年で、様々なことが変化しましたね。
変化の原動力となっているのはやはり実績です。救急はできるだけ断らずに受け入れる、重症の患者さんを治して帰す、完治はできない患者さんにも一生懸命に手を尽くす。初めの経営方針を頑固に貫いていくことで、患者さんと当院の間には信頼関係が生まれるようになりました。
当院を信頼してもらえれば、患者さんはご家族や友人をまた紹介してくれますし、非常に良いサイクルだと感じています。以前の反省もありますから、夜勤や救急対応の手当てなど職員へのフォロー体制も手厚くしました。
病院には負担かもしれませんが人への投資は今後も継続します。病院経営の厳しさが増す中で、いまも看護師は争奪戦です。宍倉病院はネームバリューのある大病院ではないので、奨学金制度などを積極的に活用しています。
病院の経営状況も職員にはオープンにして、医療機器や物品の購入、新病棟建設のプランも、現場職員が参加して話し合って決めてもらっています。
これも民事再生をきっかけにして職員が、地域と病院の関わりや、経営資源の使い方などを考えてくれるように変化したことが大きいですね。「雨降って地固まる」ではないですが、経営危機があったことですべてが良い方向に進んでいるんじゃないでしょうか。

採血

病院から地域へと広がる社会活動

——地域密着型の病院のメリットはなんでしょうか。

職員は主に地元から採用していますので、患者さんと顔見知りということはしょっちゅうです。
「自分の患者さんが受けた医療が悪い=自分の知っている人が困る」という感じで、職員が常に患者目線を持てることが地域密着型のメリットではないでしょうか。
その他にも、忙しそうにしている医師にはなかなか言いにくいことも、知り合いの職員になら言いやすいといった利点もあります。受付が待たせすぎ、検査が痛いから嫌だ、あの職員の態度が悪いなど、不満のはけ口としても機能しているみたいです。患者さん自身もまた次も来るから改善して欲しいわけで、言いやすい、言われやすい良い距離感を保てています。

——医師会でも精力的に活動されているようですが。

そもそもこの地域に戻ってきた動機のひとつが「地域医療の崩壊を食い止める」ということでした。
都内では救命救急センターが365日休みなくやっていますが、地元には救命救急センターがありません。ですから夜間の救急は二次病院と言われる輪番制で行っており、地域の病院が交代で受け持っています。はっきり言って、救急医療は不採算部門です。正直どこも経営は厳しいので受け持てない病院が増えています。
私が帰ってきた当時、二次輪番を埋めることは大変で、一時この地域では月の半分くらいは救急車の受け入れ先がないという状態でした。「これはマズいぞ」と思っているちょうどその時、医師会の救急医療体制特命理事として僕に白羽の矢が立ちました。
その後、行政と医師会が協力して救急体制を検討する委員会を立ち上げ、その委員長にもなりました。地域住民に地域の医療資源の現状を知ってもらい、身の丈に合った救急医療体制をデザインし、行政からの補助金などを増額してもらうことで、まずは救急受け入れの空白をなくすことに尽力しました。
また、「子どもの救急講習」という、救急医療のかかり方を広く知ってもらう講習会を、地元7市町村の幼保育園・小学校の入園入学時説明会などの場を借りて、年間40数カ所で開催しています。さらに、救急医療は搬送先として隣接地域に行くケースも多いので、県や隣接地域とも交渉する必要があります。そのため千葉県医師会の理事にも就任し、日本医師会の委員会でも委員を務めさせてもらっています。こうすることで国、県、地域で柔軟かつ迅速に、救急医療の改革を進めていくことができています。

宍倉先生

患者さんのニーズが宍倉病院の得意分野になります

——最後に、今後の目標と患者さんへのメッセージをお願いします。

医師会の活動を含めて多方面で活動していますが、私の基本は医療の現場です。
野球で言えば監督にはならないということですね。できる限り自分の診療時間を犠牲にすることなく、宍倉病院をベースに、医師としての使命を全うしたいですね。
来院される方が健康になりたいのはおそらく何かをやりたいから、こういう風になりたいからという理想があるはずで、そこが地域や患者さんごとに違いますので、多種多様なニーズに応えられる方法を模索しています。
例えば、病気になって検査は宍倉病院でやりたいが手術は大きな病院でという場合は、検査まで責任を持ちます。もちろん普段の薬や定期的な検査は当院でという方も大歓迎ですよ。
自分の専門をおしつけず、あくまでも患者さんのニーズがこの病院の得意分野になっていくのが理想ですね(笑)。

社会医療法人社団正朋会 宍倉病院
宍倉病院
ホームページhttp://shishikura-hospital.com/
所在地〒297-0029 千葉県茂原市高師687番地
電話0475-24-2171
診療科目外科・内科・整形外科・皮膚科・形成外科・消化器内科・消化器外科・泌尿器科・肛門外科・乳腺外科・リハビリテーション科・人間ドック
病床数54床
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診療時間午前9時00分~12時 午後1時30分~5時
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